2008年1月18日金曜日

【人間】⑨

○ いわゆる頭のいい人は、言わば足の早い旅人のようなものである。人より先に人のまだ行かない所へ行き着くこともできる代わりに、途中の道ばたあるいはちょっとしたわき道にある肝心なものを見落とす恐れがある。(寺田寅彦随筆集④)

○ わたしは良心を持っていない。わたしの持っているのは神経ばかりである。(芥川竜之介~侏儒の言葉)                                      

○ 不思議なものは数あるうちに、人間以上の不思議はない。(ソポクレース~アンティゴネー)                             

○ 僕はこういった人間を知っているんだ。つまり、なんにも口を利かないだけで、利口者で通っているんだね。(シェイクスピア~ヴェニスの商人)

○ 子供の難渋は母の心を動かし、若い男の難渋は若い娘の心を動かすが、老人の難渋はだれからも顧みられないものである。(ユーゴー~レ・ミゼラブル)

【人間】⑧

○ 人間は、この宇宙における、有機物、無機物を問わず、ほかのどんなものとも違って、自分の創り出すものを越えて成長し、自分の考えの階段を踏みのぼり、自分のなしとげたもののかなたに立ちあらわれるものだ。(スタインベック~怒りの葡萄㊤)

○ 人は頭で、生きるというが頭だけでは、まだ足りぬ
  まあ、やってごらんよお前の頭で
  生かせるものは、シラミ一匹 (ブレヒト~三文オペラ)

○ 自分のつらが曲がっているに、鏡を責めて何になろ。 (ゴーゴリ~検察官)                             

○ 世の中はしつこい、毒々しい、こせこせした、その上ずうずうしい、いやな奴で埋っている。元来何しに世の中へ面を曝しているんだか、解しかねぬ奴さえいる。しかもそんな面に限って大きいものだ。(夏目漱石~草枕)

○ 人が43歳にもなれば、この世に経験することの多くがあこがれることと失望することとで満たされているのを知らないものもまれである。(島崎藤村~夜明け前第二部㊦)