2007年12月8日土曜日

今日は、彼女の命日

  今日は、だいぶ昔につきあっていた彼女の命日。彼女は、二十歳の若さであの世に逝ってしまった。おばあちゃんの介護をしながら、夜遅くまで仕事をしていた。彼女の家を訪ねた時、仏壇の前には、彼女の成人式の遺影が飾ってあった。満面に笑みをたたえていた。その傍らでご両親が号泣していた。

 彼女が亡くなったのは、渋谷で私とデートしてから三日後である。彼女は、「久しぶりにゆっくりできた」と喜んでいた。まさかそんな彼女が急に死んでしまうなんて思いも寄らなかった。彼女は仕事の帰り、車を運転していて、道路上に立ってある案内板の柱に激突した。過労のせいか、居眠り運転をしていたらしい。

 もうすぐクリスマスというのに、彼女は、私の目の前からすーっと消えてしまった。もう二度と彼女の声も、ため息も、囁きも聞くことは、決してない。未だに携帯の留守録の彼女の音声を消せないでいる。

 「昨日はごちそうさま。クリスマスイヴにまた会おうね」

 彼女の切ない声が私の胸の中でこだまする。二度と二人で過ごすことのできないクリスマスイヴ。私にとってクリスマスは、ホワイトではなく、ブルークリスマスだ。クリスマスソングを聴くと何故か全てがむなしく聞こえる。

 彼女の名は、忍。しのぶちゃんは、バレンタインデーには、いつも手作りのクッキーを焼いてくれた。「焦げたクッキーはママに食べてもらったよ」と小悪魔のように笑うしのぶちゃんの笑顔を愛くるしく思えた。彼女は、吉川英治の三国志に夢中で、私は会うたびに文庫版の三国志を買ってあげた。

 「そんなに早く三国志は終わらないよ」と私は、天につぶやいた。

 彼女は、ゲームやアニメの話をよくしてくれた。「私の話をいつも真面目に聞いてくれるのは、あなただけよ。だから、私はあなたが好きなの」と言った言葉を思い出す。そんなたわいもないことで人を好きになるしのぶちゃんがものすごく好きだった。

 彼女と一緒にいると、心に安らぎを感じた。悪いことをしても、彼女だけは許してくれるような気がした。彼女は、人に尽くしても見返りを求めなかった。たとえ傷ついても、傷つけた人を恨まなかった。彼女は全ての人に優しかった。

 しかし、私は、そんな彼女を救うことができなかった。時々自分が嫌で嫌でたまらなくなる時がある。自己嫌悪に陥ったりする。

 そんな時、彼女が、「自分に甘えちゃダメ。私の分まで精一杯生きて」と言っているような気がした。

 ありがとう、しのぶちゃん。

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